相続税における土地評価のポイント【税理士でも間違える可能性あり】

2021年10月22日 オフ 投稿者: user32081

「土地を持っているのだけど、土地の相続税はどのくらいかかるの?」

「土地の相続税をどう評価するのか知りたい」
「そもそも土地の相続税の評価額は?」

土地の相続税評価額がわかれば、相続税の額が知れる。

ということで、この記事では以下の点についてお話しします。

  1. 個別性の大きい土地を公平に評価するため、「路線価」という基準がある。
  2. 条件のよい土地については評価額が増額される可能性がある。
  3. 条件の悪い土地については評価額が減額される可能性がある。

それでは、まいります。

税理士でも間違えることは珍しくない

あるケース、Eさんは2億円以上支払った相続税の半分近くが戻ってきました。

最大の原因は、相続税の計算にあたって土地の評価を間違えたことにあります。

Eさんは「税理士なら誰に頼んでも大丈夫なのでは?」と考えていたそうですが、実際には土地の評価は複雑で分かりにくく、税理士でもよく間違えるのです。

税金には素人のみなさんはどうすればいいのか、戸惑ってしまうことでしょう。

しかし、素人だから専門家に任せっぱなしというのも問題があります。

500㎡以上の広い土地をたくさん所有している地主や都市農家のみなさんならなおさら、相続税の土地評価のアウトラインはぜひ、理解しておきたいところです。

ということで、これだけ知っておけば大丈夫というポイントを整理してみました。

土地の評価の基準になる「路線価」

土地の評価は難しいと繰り返し述べてきました。

立地や形状が千差万別であること以外に、権利関係が複雑なことがあります。

「所有権のみで、ほかに何もない土地」であればシンプルですが、貸借権や地役権など第三者の権利が設定されている土地も珍しくありません。

さらに、土地には都市計画法、建築基準法、農地法、森林法、各都道府県の条例など、法律上の規制がかかっていることが多く、素人にはなかなか分かりません。

相続税の計算においては、このような個々の事情を踏まえて、なるべく公平に評価額を決めないといけません。

そこで国税庁では、土地の評価についてさまざまなルールを定めています。

まず、誰でもわかる客観的なベースが必要です。

土地の場合、上場株式のような市場での取引価格は公表されていませんし、取引事例も限られます。

そこで、都市部の土地については毎年、各地の税務署が「相続税路線価」というものを主要な道路ごとに付け、それをベースに土地の評価額を計算しています。

これを「路線価方式」と呼びます。

「路線価方式」の場合、たとえば1m2当たり10万円の路線価がついた道路に接する500㎡の広さの土地であれば、路線価×土地面積(30万円×500㎡)で1億5000万円が評価額となります。

「路線価」については、各地の税務署に路線価の台帳が備え付けられているほか、いまはインターネットで調べることもできます。

こうして誰でも自分の所有する土地について、どの程度の評価額になるか分かるようにして、公平性を確保しようとしているのです。

なお、郊外や地方の土地については、自治体が3年に1度決めている「固定資産税評価額」に一定の倍率を掛けて評価することにしています。

これを「倍率方式」と呼びます。

「固定資産税評価額」については、その土地の所有者のところに毎年送られてくる納税通知書で分かりますし、倍率はやはり各地の税務署に台帳が備え付けられているほか、インターネットで調べることもできます。

相続税路線価は時価の80%程度

では、相続税の「路線価」は実際に市場で取引される時価と同じなのでしょうか。

あるいはどれくらい違うのでしょうか。

相続税の「路線価」は一般に、国が毎年1月1日時点での全国の地価動向を調査している「地価公示」の8割をめどとしています。

「地価公示」の価格はほぼ市場の時価と同じ水準といわれるので、「路線価」は時価より2割程度低いということになります。

しかし、地域によって「路線価」と時価の開きには差があります。

よくいわれるのは、東京など大都市圏では「路線価」のほうが時価より2割以上低く、逆に地方圏では差が2川より小さいか、場合によっては「路線価」が時価より高いケースもあるということです。

路線価は毎年1回、見直しが行われますが、市場では日々取引がされます。

そのため、土地の需要が多い大都市圏ではある年の「路線価」が決まってから1年の間に、時価のほうが次第に高くなっていきます。

逆に、需要が少ない地方圏では、ある年の「路線価」が決まってから1年の間に、時価がどんどん下がり、路線価を下回ることも起こります。

そのため、時価の8割より高くなったり低くなったりするのです。

なお、建物の相続税評価額については、市町村が建物ごとに決めている固定資産税の評価額をそのまま使います。

建物の固定資産税評価額は一般に、実際の建築費の6~7割程度といわれます。

【土地、建物の相続税評価額の目安】
・土地の相続税評価額=「地価公示」の8割(※)

・建物の相続税評価額=建築費の6~7割

※大都市圏では「地価公示」との差が開き、逆に地方圏では
差が小さくなる傾向がある。

条件が良い土地は評価を増額

相続税における土地の評価では、「路線価方式」と「倍率方式」があります。

そして、都市部では基本的に「路線価方式」が適用され、それぞれの土地が面する道路に付けられ相続税路線価(m2当たり)に土地の広さ(m)を掛けた金額が、土地評価のベースとなります。

しかし、相続税路線価はそれぞれのエリアでよく見られる標準的な広さ、形状、道路付けの土地を最も有効に活用した場合を前提としています。

そのため、もっと条件のよい土地については増額し、逆に不利な条件の土地については減額する必要があります。

このあたりから、それぞれの土地の個別性を評価に反映するという話になってきます。

例えば、増額評価になるケースのひとつが、「角地」です。

角地というのは、2つの道路が交わった角に面した土地のことで、道路への出入りがしやすく、また日当たりや通風がよく、建物を建てるときの条件が緩和されることもあります。

そこで角地の場合、土地が面するメインの道路(正面路線)の路線価に、サブの道路(側方路線)の路線価の1~10%分を加算して計算します。

表の道路(正面路線)と裏の道路(二方路線)に接するような土地についても、正面路線価に二方路線価の2~7%分、加算して計算します。

評価額が上がる土地はこのように道路付けがよいケースに限られ、次から説明するように評価が下がるケースのほうがずっと多くなっています。

減額評価される土地は多種多様

相続税における土地の評価が減額されるケースは、多岐に渡ります。

大きく分けると次の4つのパターンがあります。

①いびつで使いにくい土地
土地は四角形や長方形のほうが使いやすく、極端に細長かったり変形したりしていると価値は下がります。

その分、相続税における評価も減額されることになっています。

例えば、奥行きの長い土地は、奥行きの距離に応じて、最大0%まで減額されます。

三角形などいびつな形をした土地は「不整形地」と呼ばれ、こちらは最大で0%、減額されます。

また、土地の一部が斜面(がけ地)になっている場合、がけ地の割合が全体の10%以上ならその割合とがけ地の方位に応じて最大7%減額されます。

②道路との関係に問題がある土地
そもそも、道路に接していない土地や、道路があるように見えてもそれが法律上の道路でない土地、前面道路と2㎡以上の間口で接していない土地などは、建物が建てられません。

そうした土地の価値は当然、大きく下がります。

例えば、道路に接していない土地の場合、前面道路に接する2m幅の通路を設けるものと想定し、不整形地としての減額(最大10%)を行った後、想定した通路の価額を減額します。

③法律による特殊な制約がある土地
土地の利用については、さまざまな法律が関係しています。

土地の利用が制約されるケースも少なくありません。

例えば、土地に建てられる建物には容積率(敷地の面積に対する建物の延べ床面積の割合)という制限がありますが、ひとつの敷地で前面道路に面した部分とその奥で容積率が異なることがあります。

路線価は道路に面した部分の容積率を前提にしており、奥の部分の容積率は低いので不利です。

そこで一定の式を使って減額することになっています。

あるいは、都市部で前面道路の幅が4㎡未満の場合、建物を建て替える際に道路の中心線から2mのところまでセットバック(後退)しなければならないケースがあります。

こういう土地は、セットバックする部分の70%に当たる額が減額されます。

④周辺環境に問題がある土地
周辺環境に問題がある土地も、利用にあたってはマイナスの条件がいろいろあるので、評価が下がります。

工場やお墓に隣接している土地、騒音や悪臭などの影響がある土地、すぐ隣が線路になっていたり、水路があったりする土地、などです。

こうした土地については、利用価値が低下していると認められる部分の10%に当たる額が減額されます。

減額評価される土地は早めに処分する

相続税における土地の評価が減額されるケースはいろいろあり、相続税の計算において適用漏れがないようにすることが大事です。

しかし、多くの土地を所有している地主や都市農家のみなさんにとってはそもそも、こうした減額評価される土地は早めに処分したほうが実は得です。

なぜなら、こうした土地は、市場での取引価格が相続税の評価額(減額した後)よりさらに低く、ほとんど買い手がつかないケースも多いからです。

いくら相続税が安いといっても、資産としての価値がそれ以上に低ければ、相対的に相続税の負担が重くなってしまいます。

先祖から引き継いだ土地はどれも同じように大事に思うかもしれませんが、不利な土地を早めに整理することも重要な相続対策だといえます。

まとめ

今回は、以下の内容をお伝えしました。

  • 形がいびつな土地、道路付の悪い土地、借地権の付いている土地(底地)などは、相続税の評価において減額される。
  • 相続税が減額される土地は、実際の市場価格がさらに低く、実は割高なことが多い。有効活用できなければ、思い切って売却したほうがよい。

また、土地を売却するときは、複数社に査定依頼をするのが一般的です。

とはいえ、直接不動産会社を何件も回っていたら、大変。

そんなときに便利なのが、リビンマッチ。

リビンマッチの査定は、土地売却の査定を一括で行えいます。

リビンマッチの評判をまとめてくれたサイトもあるので、参考にしながら検討してみてくださいね。

少しでも相続における土地評価について知識が深まっていただければ幸いです。

さいごまでお読みいただきありがとうございます。